聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~約束の詩~
奇病の原因を探るのを手伝ってほしいというフューリィの頼みを引き受け、一行はフューリィの先導で、村から一日の距離にあるという鉱山へと向かっていた。

お人好しと言われればそれまでだが、リュティアにはどうしても彼を放っておくことができなかった。それに魔の気配の原因を探り何とかしなければこれからも犠牲者が増え続けるだろうことははっきりしていたので、村のためにも一肌脱ごうということになったのだった。

山道の中腹に広場があり、今夜はそこで野宿することになった。

はりきったのはフューリィだ。

「今日のお礼をするよ!」

とあちこち駆け回り、野草やキノコの類を集めてきて、何やら具だくさんで緑色のスープをつくりあげた。一日さんざん山道を歩いてはらぺこだったパールは、大きな椀にたっぷり注いだそのスープをいちはやく一息で飲みこんだのだが――

「!!!」

パールの顔色が青くなったり紫になったりしている横で、リュティア、カイ、アクスもスープを口に運ぶ。リュティアはせきこみ、カイはうっと呻いてスプーンを取り落とし、アクスは盛大に吐きだした。

「あれ、みんな、どうしたの?」

遅ればせながらスープを口に入れたフューリィが、だぁっと口からスープを垂れ流しながら「甘っ! そして辛! 何これ!」と悲痛な叫びをあげる。

「あ…砂糖と塩、胡椒とタバスコ間違えた…」

「さ・い・あ・くだよっ君ってやつは!」

料理にうるさいパールはこの時、フューリィという人間を決定的に嫌いになったし、フューリィもこの時、善意からの行いに最悪とまで言うパールを決定的に好きじゃないと思ったのだった。
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