忠犬ハツ恋
イルミネーションの瞬く薄暗いリビングで美味しそうなリゾットとスープの香りが漂う中、私は大ちゃんに抱かれた。

あれ程望んだ大ちゃんの温もりなのに何故か心が満たされない自分がいる。
私の心は罪悪感が支配していてその他の感情が立ち入る隙が無かった。

大ちゃんを裏切った罪悪感。

檜山君に"大ちゃんと会わない"と言っておきながら今こんな展開を迎えている罪悪感。

それと……一色先生の気持ちを知った上で大ちゃんと今こんな展開を迎えている罪悪感。

……私は…どうしたらいいんだろう…?


今頃大好物のチーズリゾットが冷めて固まっているであろう事を想像してとてつもなく悲しい気分になる。

こんな時なのに私のお腹がグ〜と音を立てた。
大ちゃんがうつ伏せの私の背中を摩りながら笑う。

「腹、減ったろ?すぐ飯温め直してやるから。」

チーズリゾットはレンジにかければすぐ温かく復活する。
私の心もレンジで暖めることが出来ればいいのに…。
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