忠犬ハツ恋
将来は大ちゃんのお嫁さん、
これだけは絶対にブレない、ブレてはいけないはずだった。

"美咲はもっと大ちゃん以外の異性にも目を向けるべきだと思うけどね"

茜ちゃんは常々そう言った。
その茜ちゃんの意図はきっとこう言う事だったんだろう。

人間は大なり小なり選択の連続で毎日を生きて行く。
幸せになる為に比較の対象が必要だったんだ。

大ちゃんしか知らなければそれはそれで幸せかも知れない。
でも大ちゃんを誰かと比べる事で大ちゃんの良さをもっと知る事が出来るかも知れないし、
もっと別な人と幸せな人生が見つかるかも知れない。

そんな私に檜山君という比較対象が現れた。

私が2人の男性を天秤にかけるなんてひどくおこがましいように思えるけど、実際問題、今そういう状況にある事は事実。

ようやくそこまで思考が辿り着いた。
でも結論が自分でもよく分からない。

大ちゃんは"檜山なんてすぐに忘れる"と言ったけど、私は檜山君を忘れる事が出来るんだろうか?

大ちゃんと肌を重ねた後でさえ私の素肌には檜山君の優しく柔らかい唇の感触が今もなお全身に残っている……。

私は渦巻く迷いの大海の中で
再び温められたチーズリゾットを口にする事無く深い深い眠りに落ちた。
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