忠犬ハツ恋
彷徨うガトーショコラ
「ただいま!」

閑静な住宅街の一軒家。
家に帰り着くと、毎日返事の無いのは承知で私は帰宅した事を告げる。


私の両親は大ちゃんのお父さんの作った建築デザイン事務所で一緒に働いていた。

いつだったか何かの大会で大ちゃんのお父さんがグッドデザイン賞とやらを受賞すると
仕事はあれよあれよと波に乗り、私と大ちゃんの親達は目が回る程の忙しさになった。

彼らはろくに帰宅することも叶わず事務所に寝泊まりする毎日。

そんな中まだ幼かった私の面倒を見たのは大ちゃんだった。

私のソバにはいつも大ちゃんがいてくれたから両親がいなくてもそれ程寂しく無かったし、
もうそれが私には当たり前だった。

私には大ちゃんしかいない。
別の男性なんて考える余地も無かった。
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