漆黒の花嫁 - リラの恋人 -


首を傾げつつ。

記憶をたどれば、ちょうど重要な話をしていたと思い出し、申し訳なくなった。


「ごめんなさい。‥話の途中でしたよね?」

「――いや。気を失っていたのは、2、3分ほどの事だったから気にしなくて良い。
‥‥‥こちらに」


アードさんがベッドにあたしを手招きした。


「は、はい‥」


それにあたしは大人しく従う。

ベッドに腰を掛けると、入れ違いにアードさんが立ち上がった。

その際に、肩に毛布をかけてくれる。


「あ、ありがとうございます」


胸が高鳴った。

初めてあたしに接してくれてたアードさんに戻った気がして‥。


口元がほころんでしまいそうになるのを堪えて、顔を上げるとジェダシュカさんと目が合った。


「朱里、
ギデルスが恐ろしいか?」


唐突にジェダシュカさんがそう尋ねた。



‥恐ろしい?

その名前を聞いた途端に、またあの言い表せないような不安が広がった。


「はい‥」


小さく頷く。



――恐ろしいに決まってる。


そんなあたしを、少し苦しげにジェダシュカさんは見つめていた。

< 118 / 390 >

この作品をシェア

pagetop