漆黒の花嫁 - リラの恋人 -
首を傾げつつ。
記憶をたどれば、ちょうど重要な話をしていたと思い出し、申し訳なくなった。
「ごめんなさい。‥話の途中でしたよね?」
「――いや。気を失っていたのは、2、3分ほどの事だったから気にしなくて良い。
‥‥‥こちらに」
アードさんがベッドにあたしを手招きした。
「は、はい‥」
それにあたしは大人しく従う。
ベッドに腰を掛けると、入れ違いにアードさんが立ち上がった。
その際に、肩に毛布をかけてくれる。
「あ、ありがとうございます」
胸が高鳴った。
初めてあたしに接してくれてたアードさんに戻った気がして‥。
口元がほころんでしまいそうになるのを堪えて、顔を上げるとジェダシュカさんと目が合った。
「朱里、
ギデルスが恐ろしいか?」
唐突にジェダシュカさんがそう尋ねた。
‥恐ろしい?
その名前を聞いた途端に、またあの言い表せないような不安が広がった。
「はい‥」
小さく頷く。
――恐ろしいに決まってる。
そんなあたしを、少し苦しげにジェダシュカさんは見つめていた。