漆黒の花嫁 - リラの恋人 -
顔を上げ、思い切ってそれを確かめてみようと思った。
彼はまた、いつか見たような、少し不思議そうな視線であたしを見下ろす。
「アードさ‥」
「――アッシュ!!」
どこからか、可憐な声が聞こえてきた。
――アッシュって‥、アードさんの名前だよね‥。
その声を聞いたアードさんの肩が震えたように感じたのは‥気のせい?
駆け寄って来た声の主を見て、あたしは気のせいであってほしいと願った。
でも‥
「ジアリー‥」
その先には、アードさんのペンダントの中で微笑んでいた女の人がいた。
彼女の傍らには、さっきはぐれたのか、アードさんの愛馬のジアリーもいる。
アードさんが呼んだのは、きっと彼女の方なんだろう。
『ジアリーヌ姫』。
彼女を「ジアリー」と、
そう愛称で呼ぶアードさんは、一体彼女にとってどんな存在なの?