漆黒の花嫁 - リラの恋人 -






膝がガクリと崩れた。

そんなあたしの頬を、ふわりと何かがかすめる。



「――‥やすめ」


消えてしまった彼の代わりに傍らにあるのは、小さな小さな影。


その声を聞いた途端に、休む事なくずっと走らされた後のような、そんな疲労感が身体を襲う。


目が閉じてしまいそうになるのを堪えながら、あたしは必死に言葉をつむいだ。



『‥きっとこれで、
もう一度逢える‥‥?』


「――本当に馬鹿だよ‥。
リリラも‥‥お前も‥」



その言葉だけで、あたしは理解した。


良いからやすめと繰り返す言葉に従うように、あたしは今度こそ安心して、ゆっくりと目を閉じた。







この時にあたしが取った行動は、後になっても説明出来なかった。



分かっている事は、
あの優しい声があたしを導いて、そして力の使い方を示してくれたという事。





その正体が誰なのか、
きっとあたしはもう分かってる。



きっと、すぐに現れるから。




目を閉じたら‥‥。






クスクス..。

可愛らしい声があたしを迎える。



『初めまして、朱里』





――ホラ、ね。





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