漆黒の花嫁 - リラの恋人 -
あたしは深く頭を下げて、神妙に頷く。
テレビで見た場面を思い出しながら、それに習うようにしてその場にひざまづいた。
「マフィルリリラ王女様‥‥お初にお目にかかります」
『‥‥‥。』
しばらくの沈黙。
あたしは首を軽く傾げて、
ソッと彼女の様子を伺った。
彼女はあたしをきょとんとした表情で見てた。
そして、
躊躇いがちに見上げるあたしと目が合うと、小さく吹き出す。
―――‥え‥っ!?
吹き出してからもずっと、笑いを堪えながらも顔をそらす彼女。
あたしは固まった。
何故‥。
何か粗相でもしたんだろうか?
ハテナを浮かばせて固まったままのあたしを見て、彼女は「違うの」と言いながら何とか立ち直ったらしい。
「あ、あの‥わたくしが何か粗相をしでかしたのなら謝ります‥どうか、このとおり‥!」
『ーー‥ス、ストップ!』
「‥は‥?‥はい‥‥」
口元を押さえる彼女に、ますます不安になる。
彼女はクスクスと笑いを堪えながら、あたしを見つめた。
『私はずっと貴女の傍にいたの。‥貴女が生まれたその日から、ね。
だからもう私にかしこまる必要はないのよ』
そう言った彼女は、
理解できずにいるあたしを見て、またクスリと笑う。