漆黒の花嫁 - リラの恋人 -
その扉の前にも護衛らしき人たちが立っていたけれど、さっきあたしの部屋の前にいたほどではない。
案内してくれてた男の人が、部屋の前で真っ直ぐ立つ護衛の者に何事かを囁く。
相手が頷くのを確認した男の人が、あたしに丁寧な一礼をして戻って行った。
それを見送ってから、
コルアが静かに言った。
『お前が知りたいと思ってる事は全て俺が後で答えてやる。だが今は、それよりも先に確認しておきたい事が‥あるんだろ?』
「‥‥‥うん」
頷きながら、あたしはリリーを強く抱きしめる。
そう。
確認したい事がある。
本当は、どんな事よりも先に。
でもそうする事が怖い。
大きな扉の前で足がすくんだように動けなくなったあたしの脳裏に、
『――きっと大丈夫だから』
マフィルリリラ王女のその言葉が蘇った。
きっと、
‥大丈夫。
そう自分に言い聞かせるようにして、護衛の人たちが開けようとしてくれてた扉を、あたしは自分の手で開いた。