漆黒の花嫁 - リラの恋人 -




扉を開くと、
だだっ広い部屋の真ん中。

キングサイズの大きなベッドを囲んで、何人かが神妙な顔をして振り返った。


その顔ぶれの中に、狼狽したままの様子のジアリーヌ姫の姿を見つける。

その隣には、妙に顔立ちの整った男の人がいた。

ロゥさんの姿はない。

そんな彼の代わりではないとは思うけれど、少し隅のあたりに控えていた男の人が立ち上がった。


「入室の許可を得ていないだろう。無礼だぞ」


ピリピリしたその迫力に、あたしは震えた。


「――よい」


そこに、そんな凛とした声が響いた。

その声の主は、ジアリーヌ姫の傍に立っていた男の人。

茶色がかった金色の髪は、細かい波を描いて彼の整った額にかかってる。

ロゥさんと同じくらいか、それ以上か。

かなり長身な男の人だと思った。


ゆっくり近づいてきて、何をしていなくても甘い雰囲気を醸し出す瞳が、物珍しそうにあたしを眺めた。


そうか、と思う。

この世界ではあたしは珍しい容姿をしてるから‥。


さっきあたしを注意した男の人は、関心を失ったかのように隅の方で静かに控えてる。

彼を、あの混乱の中。

ジアリーヌ姫の隣で見かけた気がした。



でも、今あたしを見下ろすこの人は‥


――誰なんだろう?





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