漆黒の花嫁 - リラの恋人 -





パチパチと、炎の音だけが響く。


少し時間が経った頃。

俯き気味だったアードさんが顔を上げた。


その瞳が、今朝見た赤い色をしていなかった事だけが救いだった。

アードの蒼い瞳が優しく揺らめいて、あたしを映し出す。


「‥ありがとう。アカリ」




そう言われた途端。


気持ちが溢れそうになった。




お礼なんて
言わないで‥。


「‥ッ」


あたしの目から、止められそうにないような大粒の涙が零れ落ちてゆく。



アードさんの驚いた瞳があたしを映した。




‥やだ。
こんなの‥。



好きって言ってるようなものじゃないの。



‥そうじゃないならいい。

伝わらなきゃ、いい。



そう願うのに、涙は止まらなくて。


「‥ッごめんなさ、」


言いながら、あたしはリリーを抱き締めてた。





伏せてた視界が急に暗くなる。


そう気づいた瞬間、

あたしはアードさんの胸の中。


彼の香りに包まれてた。









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