漆黒の花嫁 - リラの恋人 -


内心穏やかじゃないあたしは、静かにコルアを睨み上げる。

それを見下ろして、コルアは涼しげな顔のままだった。

その表情がなんだか腹が立つ。


――言わないって約束だったのに、どういうつもりよっ!?



「‥放っておけない身体‥?」


「どういう事だ?」と言うアードさんの声が真剣過ぎて、心臓が冷たく凍るような思いがした。


‥やだ。

知られたくない。


――面倒な女だなんて‥思われたくない‥!



「‥、や。やだなっコルアってばっ!ちょっと風邪気味って言ったら、そんな大袈裟な事言っちゃって!!」


緊張で声が少しかすれてしまった。

そんなあたしを、アードさんの蒼い瞳がじっと見つめてる。

少し焦った口調になってしまった事を変に思われてないか、心配になった。

彼は勘がいいから。


どうか気付かないで‥!


祈るような気持ちでいると、アードさんがすっと近づいて来た。

ありえないくらいに近い距離で止まって、あたしのおでこに彼の大きな掌が触れる。


――え。



「‥んー。熱はないみたいだね」

「ア、アードさ」

「もう休もうか」


あたしの戸惑いの声も聞かずに、おでこにあった彼の手が腰に回る。


「――きゃぁあ!」


そのまま抱えられ、あたしは横抱きにされていた。

悲鳴をあげてしまったあたしを見て、彼は苦笑をもらす。


「大袈裟。変な事してると思われるだろう?」

「――へっ」


変な事って!!!!





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