蝶々、ひらり。


 俺はいつしか、二人の間に何らかの結果が出ることを祈るようになっていた。

有紀が振られるのでも、二人が付き合うのでもいい。
何か変化があれば、この辛い片想いから抜け出せると思ったのだ。

だけど、あんなに分かりやすい有紀に対して当の坂上だけは知らん顔で、有紀もずっと告白することを恐れていた。

二年生が終わり、三年生になる。
クラスが変わっても、有紀の想いは変わることが無かった。

時はただ流れて、関係は変わることもなく高校卒業の日がやってきた。

坂上は推薦枠を使って早々から地元の教育大学への進学を決めていたから、追うように有紀も同じ大学を受験し、俺も二人と同じ道を選んだ。
揃って合格できたのが幸だったのか不幸だったのか、今でもよく分からない。


 そして始まる大学生活。
俺たちの高校は県の北東部にあり、県庁所在地に位置する大学に通うには遠すぎたから、それぞれに大学の近くで一人暮らしをしていた。

坂上は彼女を作ったり別れたりしていたけれど、有紀は相変わらず見ているだけで告白する気はないようだった。
そんな彼女に対して、いい加減にしろよと思ったこともある。
だけどそれは、自分にも言えることだった。

有紀に告白する勇気は無いのに、諦めることもできない。

関係を変えることは怖かった。
有紀が俺を友人として信頼しきっているのが分かっていたから。

告白して振られて、ぎこちなくなるのが嫌だったし、自分の生活の中から有紀がいなくなるのは耐えられなかった。

意気地がないのは、多分俺の方だったのだろう。

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