やっぱり、無理。



「はい、タミちゃんには・・・小さいころからお世話になっていて・・・可愛がってもらって・・・だから、タミちゃんの彼女さんなら、ちゃんと私もご挨拶したかったんですけど・・・何か・・・私も立場が微妙で・・・・話しかけたら、失礼かな・・・っていうより、気分が悪いかなって、思っていて。失礼しました。改めまして、北島まりあです。」




今まで挨拶もできずにもやもやしていたことを、ここで一気に解消しようと話し出した私に。


朝霧さんは少し切ない笑顔を向けて、首を横に振った。





「なに言っているの。気分が悪いなんてこと、あるわけないわ・・・でも、やっぱり。彼が言った通り・・・まりあちゃん、すごくいい子ね?それに、謝るのは、私の方よ。」


「え?」


「薫ちゃんから、きいたわ。まりあちゃん、ごめんね?あの受賞式の時のこと・・・まりあちゃんを傷つけてしまって。あの時・・・私からいう事じゃないけど、薫ちゃん、本当に家族って・・・まりあちゃんと利栄ちゃんの事を思って答えたのよ?これは本当なの。信じてあげて?いつだって、まりあちゃんのこと思ってるの。私にだって、会うとき・・・まぁ仕事関係だけどね?まりあちゃんの話ばっかりで。もう、デレデレよ?・・・だから、今・・・もう大変。一昨日ね?お世話になった大御所の映画監督が亡くなって・・・ああ、一応私たちの仲人だったから、薫ちゃんとそろってお葬式にいったのよ。もう、まりあちゃんと2ヶ月近くあってもいないし、話もしていないって・・・憔悴しきっていて。まあ、お世話になった方のお葬式だから、そんな顔でも問題なかったんだけどね?もう、見てられなくって。で、女同士、腹わって話そうって・・・会いに来たの。」





そういって、朝霧さんは、私を正面からじっと見つめた。





「あなたには・・・つらい現実だと思う。結局は・・・私たち大人の・・・勝手な都合で、歪んだ環境にあなたをおいてしまって。本当に申し訳なく思っているわ。だけどね?周りの大人が引き起こした面倒な状況に惑わされないで?本質を見つめて?薫ちゃんは誰よりも、あなたを愛しているわ。もちろん、利栄ちゃんも。あなたが見た通り、私は、タミちゃんの恋人・・・訳あって・・・パトロンがいて、仮面夫婦関係の夫がいる、不自由な身だけどね?それでも、タミちゃんが一番だから・・・今の状況を選んだの。あなたのパパも同じ。本当にごめんね?あなたに沢山悲しい思いや我慢をさせてしまって。だけど、こうやって考えて?公にあなたのパパの妻として出るときは・・・あなたのママの利栄さんとあなたの代わりに出ているんだって。私は、そうやって思っているから。私も、いつもあなたたちを思うわ・・・だから・・・薫ちゃん、そろそろ許してあげてくれない?」






朝霧さんはそう言うと、泣き出した私の頭をそっと撫で、優しくハンカチを渡してくれた。













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