やっぱり、無理。




ツカツカとこちらに歩いてきた理事長は。


険しい表情で東野さんを見つめた。




「彼女の家の、どこがふしだらなんだ?物を大切にする躾をきちんとしている、立派なご両親だと、僕は北島さんをみて思うけれど?それより、人の事をこんな風にののしって言いふらす君の方が、僕はふしだらだと思う。そして、君の話に便乗して、罪のない北島さんをあざ嗤ったり、面白く傍観していた人たちにも、僕は失望した。それが、うちの学園の学生だなんて・・・とても悲しいし、自分に腹が立っている。こういうのは、いじめと一緒だ。大学生にもなって、こんなことを平気でするなんて!何て品性のない人間たちなんだっ!東野君、君のおじい様は、学者としては優れているかもしれないが、人間性にはどうやら問題があるようだね?」




「そ、そんなっ、祖父には関係ありません!」




理事長の厳しい言葉に、東野さんが訴えた。


確かに、東野名誉教授と、彼女の言動は関係ないはずだ。

だけど、そんな彼女に理事長は。




「でも、同じことを、君は北島さんに言ったよね?彼女とご両親は関係ないのにね?」




厳しい口調で、東野さんを問い詰めた。


東野さんも、それには答えられず黙り込んだ。



そして、なおも理事長は言葉をつづけた。



「悪いけれど、事務部長!ここにいる全員の学部、学年、氏名を控えてくれ!僕は、こういう品性のないことは大嫌いだ!今後こういう事のないように、もう一度話し合いたい。」




カフェの扉が閉められた。


確かに・・・前に、ジローが言っていたけれど。


この学園長、結構つわものだ・・・。


そんな風に驚いていたら。


もっと、驚くことを理事長が言い出した。




「ああ、東野さん。情報収集するなら、ちゃんと最後までしないと。山岸家は、確かに由緒ある名家だけどね?今の後をとっている、クリプト家具の社長・・・前社長が結婚前に未婚の母として生んだ子供だけど?それって、君のいうところの、ふしだらなことなんだよねぇ?僕はそうは思わないけれどね?」

そう言って、丸山学園長は。


ビスクドールのような美しい顔で、冷たく笑った――





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