私をひとりじめ
細長くゴツゴツした両方の指で、カタカタと早くテンポ良くリズミカルに打つキーボードの音が心地良く、周りの雑音など全く耳に入ってこない。


時折、視線を資料らしき物に向け、それをめくりながら確認する真剣な表情。


その些細な仕草に何故か心臓が高鳴った。


「亜果利ちゃん、俺の顔に何か付いてる?」

何の前触れもなしに、突然、顔を上げてパソコンから私に視線を向けた。


目が合い思わず動揺を隠せない。


「いや、べ、別に、何でもないです。」

首を左右に振りながら答えた。


いきなり会話をされても返す言葉が見つからない。


「そう。」

一言呟いて、視線をまたパソコンに戻した。


視線が合うのは恥ずかしいが、彼の顔がこちらを見てくれないのが、少し寂しかった。


目の前の紙コップのコーヒーを一口飲んだ。


今まで飲んだことのない苦い味で、大人になった気分になる。


けれど、冷めていて、それが何故美味しいのか理解出来なかった。




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