秘め恋*story1~温泉宿で…~
「大丈夫ですかっ?」
「う、うん。」
とっさに支えられた腕にドキドキした。
男の人の支えられたのなんて、久々すぎる。
「お酒が入ってるのに温泉はいけません。
ほら、座ってください。」
促されて座り込んだのはいいんだけど、
お布団の上なんですけど。
酒井くん、分かってる?
「お水、取ってきます。」
そう言って腰をあげた彼。
私はその手を掴む。
「いいから。もう、大丈夫。
酒井くん、帰って?
こんな時間まで仕事してちゃダメよ。」
本当はまだ一緒にいてほしい。
もっと話していたい。
抱き締めてほしい。
こらこら、図々しいぞ。
年取ってくると、段々性格が図々しくなってくる。
私に手を掴まれたままだった彼は、スッとしゃがみこみ、私の顔を覗きこんだ。。
そして彼は、困ったように眉を下げてはにかむと、こう言った。
「そんな顔を見たら、ほっとけませんよ。
俺だってもう仕事の時間じゃないです。」
“私”から“俺”に変わった…
礼儀正しい青年の顔から、
男の顔がちょっと見え隠れ…
「若さに負けて、こんな枯れかけ女子で遊んじゃダメよ…」
そう、後で後悔するだけだから。
あと、期待しちゃうから…
私のそんな言葉もあっさり跳ね返された。
「俺じゃ、葉月さんを癒せませんか…?」
もう、十分癒されてる。。
子犬のようなうるっとした瞳で見つめられ、
堪えきれず視線を逸らした。
「期待しちゃうから…」
「え?」
「雰囲気に流されて、これっきりなのに、
期待しちゃうから…だめよ。」
「葉月さん…」
息を吐くように私の名前を呼んだ彼。
そう、流されちゃダメなの。
これで冷めただろうと思い、再び彼の顔を見上げた…ーーーー
「ん…。!?」
完全に唇を奪われた。
予想外なことに思考が停止。
されるがまま、甘くゆっくりと唇を奪われていた。