ほころぶ桜の花
「…私は…」

「お前は霧里として生きていくしかないんだよ」




違う…
私は霧里じゃない。

沢田鈴。

ちゃんとした名前があるの。



「お願いします…私を逃がして…」

「ダメだ」



ぐいっと腕を引っ張られる。



「………っ、」

「お前はあそこの遊女だ」




現実を突きつけられた。


そう、私は島原の遊女————





そして、そこでもっとも価値のある霧里————…




「ねぇ、その子嫌がってますけど?」



声のする方に視線を向けると、浅葱色の羽織を纏った集団がいた。



あれは確か————…



「…新選組……」









これが…運命の出会い———
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