ほころぶ桜の花
「嫌がってますけど?」

「よく見てください。こいつは遊女で、島原を抜け出したんです。嫌がってるとか関係ないんですよ」

「ふーん…」



ジロジロと見られる。


まぁ、確かに…今の私は到底遊女に見える格好ではない。


髪は一つで後ろに束ね、男装をしてる。


だってそうじゃないきゃあそこから抜け出すなんてできないもの。



「……霧里、ですね」

「違う!私は霧里なんかじゃない!」




声を張り上げた。

違う…霧里なんかじゃない………



みんな霧里、霧里って…私は霧里として生きなきゃいけないの?



「霧里じゃ…ない」



沢田鈴っていう…1人の女の子なの……。




けど、やっぱり霧里なんだ。


島原の遊女、霧里。



「僕がこの子を連れてくよ、だから戻ってください」

「いや、しかし…」

「必ず戻すと約束します。破ったら切腹してさしあげましょう」



何言ってるんだ、この人。



「…わかりました…」




その場には、私と浅葱色の集団だけ。

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