瞳が映す景色
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数日後、結婚する友達へのお祝いを買いに菜々と出掛けたインテリアショップで、偶然白鳥さんを見かけた。
あたしたちは照明のコーナーにいて、候補商品の全体バランスを観察しようと後ろに下がった菜々の身体が視線もろとも固まり、どうしたと同じ方向を見れば、そこにいた。
「……」
「……小町、ちょっと休憩がてらお茶でもしない?」
「うん。喉渇いた」
広い店内は、気付かれずに店を出ることなんて容易い。それに、白鳥さんはグラスが並ぶ辺りにいて熱心に商品を吟味しているし距離もある。
けど、あたしは隠れられないのに、菜々を盾にそろそろ通路を歩く。
もうすぐ店から脱出出来るそのときだった。
「穂香ちゃんっ」
あの男はこんな部分も格好いいんだと、店内によく通る誰かを呼ぶ声に、今、そうだと気付いた。
知っていた気付いてた。別に、名前を呼ぶ前から。二人は、パーソナルスペースで寄り添ってペアのグラスを選んでいた。その後ろ姿は、似合いすぎていて冗談まじりの挨拶も出来ないほど。
『きみのおすすめは?』――数日前の言葉を反芻する。
ああ。
そういえば、
名前とか、呼ばれたことなかったな。いつも唐突に会話は始まり、別に、それを必要とはしなかったし。『きみ』なんて初めてのあれ、あれは、苦肉の策だったのか。
穂香と呼んだ白鳥さんの声は、聞いたことのない愛情を纏っていた。
特別なんだろう。きっと、呼ぶことが必要だとか関係なく名前を口にするのは。
あの人が、特別な人なんだね。