瞳が映す景色
違うよ、と白鳥さんは軽く答え、美少女は、その藁科さんの友人だと教えられる。
全方向整った人間というものには、もう出会ってはいたけど、女の子の、ここまでのクオリティはあまり見たことがなく。
美少女は、かなりの美少女だった。艶のある茶色い髪も、その巻き方も。細い指で撫でながらの唇を結ぶ仕草も、目線の使い方も。細いのに柔らかそうな太もも、華奢な膝小僧も。計算づくなのを隠さず、それでも嫌味じゃないなんて卑怯だ。
「……可愛い」
ふと漏らしてしまった感想。当然チキンの予約中だったものだから白鳥さんにも美少女にも聞かれてしまった。
ありがとうございます、でも恥ずかしいですと美少女にはさりげなく微笑まれ、白鳥さんからはいたたまれなくなるくらいのフォローを受けた。……美男美少女からの優しい言葉は切なかったなあと、先日の出来事に再度赤面してしまった。
そうして、ああお似合いだな、なんて、白鳥さんもこういう無駄な障害のない子にすればいいのに、と、馬鹿馬鹿しく思ったりなんかもした。
「――ね、白鳥さん」
「うん。なあに?」
後方にいるゲンちゃんに目をやると、多分知らないんだと思う。別に、あたしには関係ないけど。
「予約のとき言ってたじゃない。藁科さん来るとか……」
ゲンちゃんには、多分きっと言ってない雰囲気。
白鳥さんはとても楽しげだ。
「来ないかもしれないしね~」
「……」
ああ。無防備すぎるのは哀れだ。
「因みに、ゲンちゃんは合コンだと勘違いしてるんだ~。それでもまだ渋ってるんだよ。――あっ!! だから逃亡防止で荷物持ち、ね」
内緒だよ? と、思いついたばかりの逃亡防止策と共に頷かされてしまった。