瞳が映す景色

後悔……


なんて、あたしはしてない。


……後悔しないあたしは、なんてどうしようもないんだろう……。


寧ろ、勿体なかったとさえ。


あのまま――風邪で続行が不可能じゃなければ――最後まで、あたしは受け入れられた。


もう二度とないこのチャンスを、余すことなく利用してしまおうと必死だった。


キスもさっきが初めての、誰にも触れられたことのない、詳しくは何も知らないこの身体だけど、躊躇なく差し出せると思った。


この勢いは、白鳥さんだからだと自信を持ちたいけど、あたしが節操ないだけなのかもしれない前例がある。


自信を持ちたいのは、白鳥さんが好きだからだと、そこだけは断言出来る。


『好きな奴にだったらいいと思う。でも、そいつが小町を大事にしない奴なら、行くな』――韮崎、ごめんね。こんなあたしで。


好きだけど、大事には、してもらえない人に、あたしはどうしようもなく近付きたかった。韮崎にしっかり頷いたのに、出来ると思ったのに簡単に裏切った。


あたしは、容易に、浮気相手や愛人になってしまう人間かもしれない。多分、物凄くチョロいんだろう。苦しくても何でも、離れられなくなるんだろう。ありきたりな話みたいに、ただ、一緒にいられる時間があればいいとしながら、いつしか、足りなくなって泣きわめく。それでも、いいと思うんだ。


そんなことにはさせてもらえないだろう。だから好きなんだ。そんな白鳥さんだから、あたしは、さっきの愚行を恥じなければいけない。


熱くて熱くてたまらないあたしの脳内は、まだ反省出来なくて……。


いつかまともな思考になれますようにと、白鳥さんから移された風邪にうなされながら、苦しい翌朝を迎える。




どうかどうか、あの人は元気になっていますように。

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