恐怖の友達
幾島龍二
「ここはどこだ!? ここは……ホテル……豪華な装飾。これは夢か? そのわりには体の感覚がはっきりしている」
龍二は、数々の高級品が置かれ、壁には悲しい顔の女性が描かれた絵画が掛けられている。
その部屋に一人でベットに寝かされていた。
そして上半身を起こし頭を左右にふった。
意識がはっきりしてきたのか、龍二の大きく優しさと涼しさに満ちた瞳に輝きが戻る。
「お目覚めかな。よく眠っていたね。いや、気絶していたかな?」
龍二の背後から声が聞こえた。
背後から声? 背後には壁しかない。
体が動かない。さっきまでは動いたのに!
龍二の色白のきめ細かい肌から汗がにじみ出る。
汗も美しい男の顔が恐怖で歪む。
それでももう一人の呪われた男よりも美しいが。
美人薄命。それは女性だけでなく、男性にも当てはまるらしい。
「そんなに怖がらないでよ。傷つくな。君は殺さないよ。僕を愛してくれたらね」
龍二の背後から人間の手が龍二の腹を貫いた。
「怖がるからいけないんだよ。何で僕を愛してくれないんだー!」
「や……やめろ……やめてくれ!」
何度も何度も龍二の腹を白い腕が貫いた。