恐怖の友達
幾島龍二

「ここはどこだ!? ここは……ホテル……豪華な装飾。これは夢か? そのわりには体の感覚がはっきりしている」


龍二は、数々の高級品が置かれ、壁には悲しい顔の女性が描かれた絵画が掛けられている。


その部屋に一人でベットに寝かされていた。

そして上半身を起こし頭を左右にふった。


意識がはっきりしてきたのか、龍二の大きく優しさと涼しさに満ちた瞳に輝きが戻る。


「お目覚めかな。よく眠っていたね。いや、気絶していたかな?」

龍二の背後から声が聞こえた。

背後から声? 背後には壁しかない。

体が動かない。さっきまでは動いたのに!

龍二の色白のきめ細かい肌から汗がにじみ出る。

汗も美しい男の顔が恐怖で歪む。

それでももう一人の呪われた男よりも美しいが。


美人薄命。それは女性だけでなく、男性にも当てはまるらしい。


「そんなに怖がらないでよ。傷つくな。君は殺さないよ。僕を愛してくれたらね」


龍二の背後から人間の手が龍二の腹を貫いた。


「怖がるからいけないんだよ。何で僕を愛してくれないんだー!」

「や……やめろ……やめてくれ!」


何度も何度も龍二の腹を白い腕が貫いた。


< 15 / 21 >

この作品をシェア

pagetop