シンデレラを捕まえて
僅かな沈黙ののち、口火を切ったのは椋田さんだった。彼女はいきなり、深く頭を下げた。
「ごめんなさい」
「え? あ、む、椋田さん?」
「何年も頑張ってくれたあなたの送別会を、あんな最低なものにしてしまって、本当にごめんなさい」
椋田さんは頭を垂れたまま続けた。
「何も知らないのなら、知らないままの方が幸せなのかもしれないと思ったの。知らないで、そのまま自然消滅でお別れする方が傷も浅いかなって。でも、本当はきちんと教えてあげるべきだったのね。美羽ちゃんのことを考えているつもりで、私は何も考えていなかった。知らないふりをしただけだった」
ごめんなさい、と続ける椋田さんに慌てて言った。
「あ、あの、頭上げてください。もう終わったことですから」
「でも、一度ちゃんと謝っておきたかったの。あなたの気持ちが落ち着くまでと思って時間を置かせてもらったけれど……、本当は翌日にでも連絡すべきだったのかもしれないとも思ってる」
「も、もういいですから」
どうにか椋田さんに頭を上げてもらう。
「お待たせしました」
その時、セシルさんがグラスを二つ、トレイに乗せてやって来た。
「Tio Pepeです」
それは、椋田さんお気に入りのシェリー酒だった。彼女はいつも、これを食前酒として楽しんでいた。
「ありがと……」
椋田さんが気弱な笑みを見せてグラスを受け取った。セシルさんが私の前にもグラスを置いてくれる。
「美羽ちゃんも、どうぞ。では、料理をお出ししますね」
椋田さんがあらかじめ注文をしてくれていたらしい。トルティーヤやホタテのコキール、生ハムが次々とテーブルに並んだ。
「食べましょうか」
「あ、はい」
食事をとりながら、椋田さんに近況を話した。
「建築デザインの会社なんですけど、充実した毎日を送っています。だいぶ慣れてきました」
「そう、よかった。美羽ちゃんの仕事ぶりならどこの会社でもやっていけると思うわ」
「ありがとうございます」
私が元気でやっていることに安心してくれたのか、次第に椋田さんの顔に笑みが浮かぶようになってきた。
「ごめんなさい」
「え? あ、む、椋田さん?」
「何年も頑張ってくれたあなたの送別会を、あんな最低なものにしてしまって、本当にごめんなさい」
椋田さんは頭を垂れたまま続けた。
「何も知らないのなら、知らないままの方が幸せなのかもしれないと思ったの。知らないで、そのまま自然消滅でお別れする方が傷も浅いかなって。でも、本当はきちんと教えてあげるべきだったのね。美羽ちゃんのことを考えているつもりで、私は何も考えていなかった。知らないふりをしただけだった」
ごめんなさい、と続ける椋田さんに慌てて言った。
「あ、あの、頭上げてください。もう終わったことですから」
「でも、一度ちゃんと謝っておきたかったの。あなたの気持ちが落ち着くまでと思って時間を置かせてもらったけれど……、本当は翌日にでも連絡すべきだったのかもしれないとも思ってる」
「も、もういいですから」
どうにか椋田さんに頭を上げてもらう。
「お待たせしました」
その時、セシルさんがグラスを二つ、トレイに乗せてやって来た。
「Tio Pepeです」
それは、椋田さんお気に入りのシェリー酒だった。彼女はいつも、これを食前酒として楽しんでいた。
「ありがと……」
椋田さんが気弱な笑みを見せてグラスを受け取った。セシルさんが私の前にもグラスを置いてくれる。
「美羽ちゃんも、どうぞ。では、料理をお出ししますね」
椋田さんがあらかじめ注文をしてくれていたらしい。トルティーヤやホタテのコキール、生ハムが次々とテーブルに並んだ。
「食べましょうか」
「あ、はい」
食事をとりながら、椋田さんに近況を話した。
「建築デザインの会社なんですけど、充実した毎日を送っています。だいぶ慣れてきました」
「そう、よかった。美羽ちゃんの仕事ぶりならどこの会社でもやっていけると思うわ」
「ありがとうございます」
私が元気でやっていることに安心してくれたのか、次第に椋田さんの顔に笑みが浮かぶようになってきた。