MOONLIGHT
悲鳴が上がった。
驚いてまわりを見ると、どうやら将が、周りの人にわかってしまったらしい。
将がサングラスとキャップを外し、それを私にかけさせ、かぶらせた。
そして右手で私の荷物を持ち、左手で私の手をとった。
「とりあえず、いくぞ。」
「え?何で、キャップとサングラスはずしたの?」
「写メ、撮られるにきまってるし。」
私は、クスリと笑った。
「将のこういうところが好き。」
「え?」
私の言葉に顔を赤くする将。
私はキャップとサングラスを外した。
「レイ?」
「もういいよ。私の顔もばれるのは時間の問題だよ。ネット社会だし。それに、鎌倉ではもう知れ渡ってると思うし。神田先輩が大学でばらしてくれたから。」
私がため息をつくと、将が嬉しそうに笑った。
「そっか、じゃあ、行こう。」
そう言って2人歩きだした。
写メを写す音が途切れなくする。
帰国するだけだからって、服装に手抜きをしなくてよかった。
一応著名な梶教授に同行だから、スーツ着用でこの出張は通した。
今日は、ベリー・Bの黒のスーツ。
何故か、初日到着した宿泊先のグランドヒロセNYに夕真さんと青山さんが待ち構えていて、そのままベリー・Bの店へ連れていかれた。
真夜中だったのに。
そして、採寸されて。
どうやら私のウエディングドレスは、ベリー・Bのデザインになるらしい。
らしい、っていうのは、私の希望じゃないし。
だけど、夕真さんはじめ将、典幸の希望で決定事項みたいだし。
まあ、皆がそう言うならそれでいいけど。
別に、適当にホテルの貸衣装で私はよかったんだけど。
で。
帰る前日に、ホテルにベリー・Bからこのスーツが届けられて。
私が気にいったから、プレゼントするって。
驚いた。
まあ、私のものをこれまで典幸がしょっちゅう買っていたし、そういうこともあるんだろうけど。
頂いたスーツを見てまたびっくり。
何か。
今までと、デザインが違う。
今までのは『格好いい、可愛い、少しセクシー』、っていうデザインだったのに。
このスーツは。
何て言うか。
『クールで、微かにセクシー』
今までの、ベリー・Bとは路線が違う。
まあ、私はこの路線の方が断然好きだけれども。
てゆうか。
滅茶苦茶気に入った。
ということで、帰りこれを着てきたんだけど。