MOONLIGHT
時間短縮のため、3誌まとめて、取材をうけた。
将はしっかり隣に座り、余裕の笑みをたたえている。
本当に、普段とちがう。
カメラを向けられるとスイッチが入ったように、キャラが変わる。
将のキャラは冷静で、大人で、無口。
だけど優しくて、爽やかさもあって男らしい。
家で弁慶と私の取り合いをしている子供っぽい将はどこにいったんだろう。
不思議に思っていると、丁度そのことを突っ込まれた。
「将君のどこに惹かれたんですか?」
女性記者が聞いてきた。
この記者は随分将と親しいようだ。
「あー、どこでしょう?」
上手く答えられなくて、つまってしまった。
その女性記者は直ぐに答えられない私に、驚いたようだ。
「ええっ!?瀬野さんの素敵なところ、沢山あるのに?」
「えーと、素敵なところと惹かれたところ、ってちがいますよね?」
「違いますか?」
怪訝そうな記者の顔。
「…私の場合は違います。例えば、将は顔が綺麗でスタイルもいいけど、それがそのまま惹かれた理由ではないですし。」
「……。」
「あー、でも。経歴を見て尊敬しました。」
「…沢山の賞をとって見えるからですか?」
「自宅のとんでもない量の資料を見て、努力家だと。その努力をきちんと実らせていると。」
「・・・レイ、企業秘密をあんまりバラすな。」
将は照れくさそうに頭をかいた。
「後は、弁慶ですね。」
「あ、将君が飼っているワンちゃん?」
先日のペット特集で、弁慶は有名になった。
「ええ、不器用な子で。人見知りも凄いし、それがなついていて。将は居心地がいいんです。将の優しさにもブレがないし・・・それは私にもあてはまります。私も不器用で・・・でも、将には懐いて・・・素直に甘えられるのです。」
そう言うと、将が嬉しそうな顔をした。
「つまりは、そんな大した理由はないんです。努力家で、誠実で・・・私を甘えさせてくれて、居心地がいいこと、ですかね。」
そう答えると、将はますます嬉しそうな顔をした。
「垣本さん、レイは自立していて、普段は人から頼られることはあっても、自分は頼らないんです。だから、レイが素直に甘えてくれるって、それだけ俺を信頼してくれてるんだ、ってことなんです。」
もっと、派手な答えを期待していたのかもしれない、女性記者――垣本さんは、つまらなそうな顔をしたけれど、将の言葉で納得したようだ。
その後、仕事のこと、医者としての信念、戸田とのいきさつ、など諸々を聞かれた。
「あと、うちファッション誌なんですが、城田先生のファッションが今話題になってるんですが、どちらのブランドを愛用されていますか?」
私の着ている服なんて、興味あるのか?
私が、訝しく思っていることがわかったらしく、将が吹き出した。
最近、将は私の心を読みすぎる。
「ぶっ、レイは芸能人でもない自分の服なんて興味あるのか?って思ってるだろ?残念ながら、皆興味あるんだよ。」
よくわからないけど…。
「色々ですよ。フランスとかイタリアのものが多いですけど…。あー、最近はベリー・Bが多いですね。今着てるこのスーツもそうです。」
そう言うと、垣本さんが目を見開いた。
「ええっ!ベリー・Bですか?そのスーツ、でも、ベリー・Bに見えませんけど?」
「ああ、べべがレイを気に入って、レイ仕様で作ったやつだから、他とは違うんだ。」
えっ、そうなの?
驚いて将を見たけど、垣本さんも何故か驚いた表情だった。