MOONLIGHT



「ふん、バカバカしい。私は忙しいんだ。リカには、次凄いオファーが来ているんだ。今日の芝居を見に先方が見える。とにかく、リカの邪魔はしないでくれ。もし、邪魔するような事があれば、君の恥ずかしい過去をマスコミに流すぞ?」


社長が、ニヤリと笑った。


私の、恥ずかしい過去?

オサムのことか?

いや別に恥ずかしい過去じゃないけど?


「・・・別に、私、恥ずかしい過去なんてないですけど?」

「ほお、瀬野将の妻が過去にチンケなスーパーのチラシモデルや、パチンコ開店のコンパニオンやってたなんて知られていいのか?」


勝ち誇ったように、笑うけど。

理解できない。


「別に恥ずかしい事はないです。いやむしろ、雑誌やショーの仕事より、凄く楽しかったですけど?あ、商店街の夏祭りとか、花火大会のポスターとって、浴衣着てコンパニオンをやったのも楽しかったですよ。帰りに綿あめやリンゴ飴もらったりして。」

「「「「「………。」」」」」


何故か、社長ばかりか、うちの学生も私の言葉に唖然として、黙り込んだ。

何だ?

今日はよく黙り込むな。

ただ、芝崎だけがゲラゲラ笑っている。

黙りこまれるようなこともいってないけど、笑われるようなこともいってない筈だが。

よくわからん。

そんなことを考えていたら。


「monsieur EBARA!」

フランス語が、聞こえてきた。

社長が慌てて振り向く。

凄い笑顔だ。

しかもキモいくらい作り笑顔。


「おぇ…。」


つい、口から感想がもれてしまった。

学生4人と、芝崎が爆笑した。

エバラ社長に睨まれた。


どうやら、次の凄いオファーとやらの関係者らしい。

フランス映画にでもでるのか。

だったら…。


「エバラ社長。」


私も作り笑顔で話しかけた。


「何だね?」


不機嫌な顔で振り向いた。


「本番前に、将の楽屋へは行きませんから。ご心配なく。」


そう言うと、ならいい、と私にはもう用はないという態度で、フランス人に向き直った。



「ひとつ、質問ですが、水沢さんは次のオファーでも恋人役の人の実際のパートナーにクレームをつけるんですか?」


私は、エバラに質問をした。

フランス語で。


「な、何を言っているんだっ君はっ!!」


真赤な顔で、振り向くエバラ。


私は失礼します、といって皆を伴いその場所を後にした。







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