MOONLIGHT
「医者は、冷静な方がいい。」
常々思っていることを伝えた。
「うん、確かにそうだけど。今は、医者じゃないし。」
「え?」
「家なき子のレイで、弁慶の仲良しさん。」
まあ、確かに。
住む所はお世話になってますけど!?
でも、ちょっと、恩着せがましくない?
言葉のチョイスもどうかと思うし。
そう思って、瀬野将を見ると、クスクス笑う。
「そうそう。そうやって、思ってること、顔に出してよ、俺の前では。」
サラリ、と恥ずかしい事を言ってのけた、この男。
かあ、と顔に熱が集中する。
ダメだ。
タバコ吸お。
私は、バックを持って、バルコニーに出た。
「素敵…。」
鎌倉の海が一望できる、パノラマが広がっていた。
テニスでもできるんじゃないかという程広いバルコニーは、瀬野将の部屋のと繋がっていた。
タバコをくわえ、火を着ける。
「俺さ、レイほど格好よくタバコを吸う女みたことない。初めて会った時、タバコを吸う姿に暫く見とれてた。気づいてた?」
「は?格好いい?…意味わからない。こんな体に悪いもん、格好つけるためだけに吸うバカがどこにいるのよ。旨いから、ただ吸ってんでしょ?旨いに格好いいもなにもないわよ。大体シケモク吸う女のどこが、格好いいのよ?…格好いい女だったら、浮気なんかされてないわよ。」
思ったことを、そのまま言うと、またゲラゲラと笑う。
そんなに、人の不幸が楽しいか。
「…いや、シケモク吸う姿も…格好、よかった…くくっ…。」
いいよ、好きなだけ笑えよ。
私は首をすくめて、携帯用の灰皿にタバコを押し付けると、立ち上がった。
そろそろ病院に行く時間だ。
今日は夜勤が入っている。
鎌倉学院大学病院に勤めることになって、10日だ。
典幸にも、そろそろ近況報告をいれないと、面倒なことになる。
そう思うと、一気に気が重くなった。
「これから病院?」
瀬野将のハスキーボイス。
この男、声まで格好いいなんて。
でも、歌うとよく伸びる声だったな。
「夜勤です。」
そう答えると、部屋をかすのだからと言われ、携番とアドレスを赤外線で交換した。