MOONLIGHT
夜勤明け、部屋に戻ると玄関で弁慶が待っていた。
尻尾を全開でふっている。
無茶苦茶可愛い。
荷物も置かず、弁慶をなで回す。
弁慶も恋人と再会したように、大歓迎をしてくれる。
うう…かわいい。
視線を感じて、ふと瀬野将を見ると、眉間にシワを寄せている。
何だ?
視線をたどると、私が持つコンビニの袋。
ビールと弁当…。
えーと。
女子力のなさ、モロバレだな。
ま、いいや。
どうせ、瀬野将だし。
そう思っていたら、ため息をつかれた。
あー、何か凹む。
疲れてるし、しょうがないと思うんだけど。
と、思っていたら、弁慶を奪われた。
えー、もう連れて行っちゃうの?
弁慶だって、瀬野将の背中越しに、私を切ない目でみてるし。
瀬野将の人でなしっ、と、思っていたら。
「シャワー浴びたら、俺の部屋に来て。朝ごはんついでだから、つくるし。」
前言撤回!
瀬野将は、出来た人間だ。
お誘い頂いた通り、瀬野将宅へお邪魔した。
手ぶらじゃ、何なので。
DVDをお土産に。
カテーテル手術の手引き。
見習いの頃、なぞるように何度も見た。
なんで、こんなグロいのを土産に、と思ったかというと、瀬野将のDVDのコレクションの中に、医療関係のものもあったからだ。
まあ、グロいから見るかわからないけど。
だけど、持って行ったら滅茶苦茶喜ばれた。
瀬野将の趣味がいまいちわからないけど、まあ喜んでくれたからいい。
あと、『オネエへの道』っていう、変なDVDも見つけたけど…。
それには、触れないでおこう。
瀬野将は手先も器用で、料理も上手だった。
買ってきたお弁当も広げる。
「え、それも食べるのか?」
「うん、無駄にしたらもったいないし。私、食べ物は無駄にしない主義だから。」
別に特別な事を言ったつもりはないけど、瀬野将は黙って私を見つめていた。