MOONLIGHT
4、偶然か必然か


あっという間に、1ヶ月が過ぎた。

その間に、前に住んでいた東京のマンションの部屋も引き払った。

惜しいものは、アルバムと仕事関係の資料ぐらいで。

後は、生活の上で、必要な衣類と日用品位だった。


その他の荷物は業者に頼んで全て廃棄してもらった。

結婚するときは、一緒に準備した部屋も、最後は業者任せで、オサムは顔も出さなかった。

最後にきちんと話をしたいこともあったのに。

まあ、病院の事にかかりきりで、ほとんどこの部屋には帰ってなかったし。

オサムも実家にいる方が多くて、オサムの私物もこの部屋にはほとんどないから、あたりまえか。

もう、ため息しかでない。




オサムとは、大学4年の時に、バイト先で知り合った。

自分ではそうは思わないが、見た目がわりといいといわれる。

コンプレックスでしかない、女にしては170もある長身と、胸は肩がこってじゃまとおもうのに、手足だけやけに長くて細い宇宙人みたいな体型が、モデル事務所の人の目にとまったなんて。

世界の七不思議だ。

大体、頭が小さいのか、目の大きさと顔の大きさが比例していなくて、目ばかりギョロギョロと目立つし。

まあ、鼻は…鼻筋が通っていて、唯一気に入っているけど。

でも、そんな私が、モデルに向いているなんて信じられなかった。

だけど、母親が高校2年でなくなり、もともと父親は戸籍からして存在しない私は、母親の貯金で生活していて。

わずかな貯金を少しでも減らしたくない私は、生活費と大学の学費を稼がないといけない立場で。

モデルの仕事はありがたかった。

だけど、大学の勉強と医者になる夢があるので、モデルの仕事はショーとか雑誌はお断りして、休日にできるスーパーのチラシとか、町内会の花火大会のポスターとか、パチンコ店などの開店のイベントコンパニオンを中心にお願いしていた。

モデルの小さな仕事は案外数があり、雑誌のように時間拘束が長くなく、これが地道にこなせばいいお金になったのだった。

現場での待ち時間は、勉強にあてられたし、大学も奨学金を貰えたから、思ったよりも充実した大学生活を送ることができた。

そんな生活も3年近くたち、大学4年の春、イベント担当スタッフのバイトで入ってきた、大学1年のオサムと出会った。


私の、一目惚れだった。




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