MOONLIGHT
「ふふ、凄い勢いでタバコ吸ってたね?ごめんね?うち家のなか禁煙だから。」
申し訳なさそうに、夕真さんが言う。
「いえ、そんなことは構いません。ただ、仕事終わりに、戸田さんから急に電話がかかってきて、瀬野将の車にいきなり乗せられて、タバコを吸えなかったので。気にしないでください。」
そう言うと、夕真さんがクスクス笑った。
「将君の事、瀬野将って呼んでいるの?」
「あー、何となく。」
「そう。ねー、将君の事、どう思う?」
「はっ!?」
ニヤニヤ笑いながら夕真さんが聞いてきた。
そんな姿もお茶目に見えるって、どんだけ魅力的な人なんだろう?
タバコをくゆらせながら、見とれてしまった。
「はあ…レイちゃんって、格好いいよね?」
突然、ため息をつくように、夕真さんが変なことを言い出した。
「は?」
「いや、私今までで、格好いいって、心の底から思った人ってタケちゃん、最初の主人だけなんだけど。レイちゃん、2人目だわ…。格好いい…。本当に…。」
そう言って、夕真さんは私の手を握りしめた。
え?
てゆうか、近いし。
タバコ吸ってるし。
「ゆまっ!何してるの!?」
あ、さっき最初に挨拶した、青山さん。
夕真さんの今の旦那さん。
たしか、さっき言っていた最初の旦那さんは若くしてなくなったとか。
でも、今は幸せそうで、いいな。
沢山泣いたんだろう。
人の生死に関わる仕事をしていると、よくそういう場面に出会う。
だから、今、幸せそうで、よく知らない人だけど、ホッ、とする。
そんなことを考えていたら。
青山さんが、凄い勢いでやって来て、私の吸っていたタバコを奪い、地面に叩きつけた。
「きくや!?」
「ゆまの前で、タバコを吸うな!」
凄い剣幕で怒鳴られた。
周りの草木が一瞬、震えたほどだ。
夕真さんが、青山さんの腕をつかみ、違うのっ、と叫んだ。
なぜか、それで空気が一瞬、和らいだような気がしたけれど。
私はしゃがみ、無言で捨てられたタバコを携帯用灰皿に入れた。
そして立ち上がると、私は頭を下げ、失礼します、と言って歩きだした。