MOONLIGHT
8、正体をあかす時



「はー、だけど、レイちゃんも人がいいよなー。」


戸田が、統一感のないリビングで、旨そうに、ビールを煽った。


あのあと、森村さんが電話をして、背広の襟に向日葵のバッチをつけた男の人が2人来て、森村さんを加えた3人が、オサムと事務長を連れて帰った。

青山さんが、後は森村さんが処理するから、と、言い、いきなり戸田の荷造りをし始めた。

そして、検査はまたにする、という我が儘発言をして、退院をした。

余りの勝手ぶりにあきれていると、戸田理事を家まで送れと、理不尽な医局長命令が出て、戸田宅に拉致された。

はあ。

で、拉致の共犯者は、青山さん、典幸、瀬野将、そして何故か、北村さんまで…。

皆で、ビールを飲んでいる。

あ、瀬野将だけ、ノンアルコールビールだ。

車だし。



「でも…。強がりじゃないけど、私は、2年を棒にふったわけじゃない。この2年は医師として、素晴らしい経験をさせてもらったと思う。今考えると、T大であのまま研究を続けていたら、いつか行き詰まっていたと思う。医療の現場しか経験できないこともあるし、T大しか知らない私は、いくら立派な提案をだしても、机上の空論だったとおもうから。2年前の私と今の私では、考え方も違っているし。」



とりとめもなく、話してしまったけど、皆何故か、私の話に聞き入っている。



「…レイちゃん、T大から戻って研究を再開してくれって、ラブコールきてんだろ?」


戸田さんが、ポツリと呟いた。

本当に、私の情報筒抜けだよね。

私は、首をふった。


「どの面さげて、今更…。」


タバコをくわえて火をつける。


「だけど、俺はレイに戻って欲しい。」


典幸が私に、向かってそう言った。

はあ。


「てゆうか、典幸わすれてない?私に今後一切関わらないで、っていったよね?なのに、またNY行ったの?何で服送ってくるのよ。」


きつく睨む。


「何、言ってるんだ。俺たち縁をきれるわけないだろ?中川と別れたんだ、これからは、思う存分、レイを連れ出して、遊ぶからな。欲しいものあったら、何でも買ってやるからな?」


また、そんなことを…。


「もう、欲しいものなんてないから、ほっ…「なあ、葉山さん、レイは俺の恋人なんだけど、葉山さん、一体何?」


典幸に抗議しようとしたら、ものすごーく不機嫌な、瀬野将の声がした。

何故か、戸田と青山さん、北村さんが吹き出した。


そして。

典幸が爆弾発言をした。


「俺?俺はレイの兄貴だ。」


しかも、勝ち誇ったような顔で。


瀬野将が、驚いた顔をした途端、吹き出した3人が爆笑した…。

この人達、知ってたんだ。

で、わざと、面白がって、瀬野将に言わなかったんだ。

遊ばれてるぞ、瀬野将。


ヤクザなのに…。



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