MOONLIGHT
「なっ、なっ……。」
あまりのことに、赤面する。
「俺にとっても、最愛のレイだよ。だから、意地を張るのもいい加減にしないと、後悔するぞ。この先、ずっと一緒にいるんだから、後悔して苦しむレイを俺は見たくない。本当は、お父さんのこと大好きなんだろ?素直になれ。」
大好きだなんて、そんなこと!
瀬野将の言っていることに反論したいけど、それより耳元で、そんなセクシーな声で囁くのはやめてほしい。
こ、腰が…くだけでしまう!!
必死で耐えようと、顔を歪めて踏ん張るが…。
「まだ、わからないか?今日、葉山さんが中川にキレて殴りかかりそうになった時、レイ咄嗟に何て言った?会長を泣かせるなっていっただろ?そういうことだよ…レイはお父さんを泣かせたくないんだ。だったら、今お父さんが泣きたい気持ちなのは誰のせいだ?それに、なんだかんだいっても、葉山さんのこと大好きだよね?」
瀬野将がそう言うと、典幸は蕩けそうな顔をした。
ムカつく!!
「それは、瀬野将の勘違い!!」
そう言うと、ぎゅうっ、と抱きしめられた。
「素直になれ!…レイ、青山先生の家に行った時に、夕真ちゃんに会って、一番最初にサインをくれって言ったよね?つきあっててわかるけど、レイって人に頼みごとされることはあっても、めったにしないよね?なのに、初対面の夕真ちゃんに挨拶していきなり頼んだよね?それもちゃんと、『典幸へ』って名前まで頼んで。字の説明までして。気づいてないけど…そういうことだよ。葉山さんが何よりも夕真ちゃんのことが好きなのわかってるから、無意識にそう言う行動にでたんだよ。レイは家族思いだ。これから、俺に対しても、そうあってほしいな。」
「……。」
「レイ、親父さ…レイが鎌倉に住むようになって、ここの別荘にずっと住んでるんだよ。出社もしないで。葉山から鎌倉が近いから、せめて近くにいたいって思ったんだよ。わかってやれよ。親父も、もう、72だぞ?」
ふん、そんな泣き落としの手を使うなんて…典幸、卑怯な男だな。
そんなこと言われたら…。
何かが溢れそうになって、必死で唇を噛み、耐える。
だけど後ろから手が伸び、唇を外された。
余計なことを…と、瀬野将を睨もうとしたけど。
「まあ、条件次第では、レイの言う事をきいてもいいぞ?」
頑固ジジイの意外な言葉で止めた。