大罪
罪と創造
「さぁ、いっておいで。」
神は魂を導く。

——天空宮
そこは、神に仕える大罪人が世の均衡を守っている神聖な場所だ。
七人の大罪人は神に忠誠を誓い、長き償いを経て今に至る。

傲慢の大罪人ルシファー
嫉妬の大罪人レヴィアタン
憤怒の大罪人サタン
怠惰の大罪人ベルフェゴール
強欲の大罪人マンモン
暴食の大罪人ベルゼブブ
色欲の大罪人アスモデウス

七つの大罪を持つ者は許され、各々の役割を果たし、人間界を守っている。

やがて、生きる者が溢れかえらぬ様に死を司る“タナトス”が生まれた。

古く、言い伝えられる言葉では
“人間界に降り立ち、全てを殺し続け、神の怒りに触れたタナトスは罪人として地獄に送られた。”
とある。

地獄では罪を償った者を生かす“ゼロ”が見回りをしている。

彼女はタナトスを生かした。

神は言った。

『決して生かしてならない者を生かした。それは罪である。』

罪人として神に仕え、彼女もまた許された。

ただひとり、“タナトス”だけは許されることはなかった。

タナトスは言った。

『ならば己の屍を背負おう。』

頭に頭蓋と冥府の鎖を纏い、贖い続けた。

罪人を繋ぐ鎖を自らの屍と繋ぐ。

輝く鎖は魂を連れて逝った。

魂は裁きの間で裁かれ、神により導かれる。

「さぁ、逝け。」

神は指先で魂を導き続ける。

「主。」
神の傍らに白髪の髪の少女が来た。
「……」
神と称される人物の格好は威厳を感じられない。
ごく普通の人間のような服装だ。
大きめの服から色白い肌が覗く。
「主。」
もう一度、神を呼ぶ。
「……何だ。」
神は玉座に座ったまま、少女を膝に乗せた。
「えへへー!」
少女の漆黒の双眸が嬉しさで輝く。
「ゼロ、御前はいつになったらこうやってせがむのを止めるんだ。」
「だめー?」
神に少女が口を尖らせた。
「ダメよ。あまりに子供じみているわ。」
向こうから女性が来て言った。
その頭には髑髏。
髪色は漆黒。
そして、罪人の証である冥府の鎖があった。
「タナトス。」
「やれやれ、こんな甘ったれが主とは此処も末だわ。」
憐れむように、ゼロと対極の色の目で見た。
白銀の瞳。
髑髏に繋がれた鎖と同じ色だ。
「……私と性能は変わらないくせに。大人ぶるんじゃないやい!」
「貴方が子供なのよ。」
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