当て馬ならし
狂気の魔術師の手中に
あかがね色の仮面が現れる

「ひっ」
それが何を意味するか悟って、
息がひきつって止まる
「姫様には、今騒ぎを起こされては
 こまるのですよ。
 なので、お国に帰って頂くという
 事でどうでしょう?」
・・・・操って・・・
国に帰らせるつもりなのだ・・・
その途中の馬車を襲って・・・

「察しが良いのはありがたいし
 ・・・何よりその恐怖に歪んだ眉が・
 ひひ・・そそりますなぁ」
そお言いながら仮面をもって近づいてくる

仮面から黒く這い出した紐
・・・いや一つ一つが意志をもって
動いているように見える

そうそれは触手・・・
ザワザワとうごめき、
私に向かってその手を伸ばしてくる。
本能から来る拒絶感が息を荒くさせる

心臓が暴れ出し

汗が噴き出る

・・・助けて・・・

脅威からくる絶望が、
私を包んでいく
「ふふふ・・・助けてあげましょうか?」
まるでその言葉が・・・
絶望の中に指した一筋の光に思える
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