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私の知っている大人しい穏やかな和馬のまま。

そんな和馬のバツの悪そうな顔を見ていたら、なぜか悪戯心が湧いてきた。

もっと困らせたくて、首を傾げてわざと意地悪を言った。

「本当かな?私、覚えてないからな」

和馬は両手を上げる仕草をした。

「本当だよ」

「二人きりだったのに?」

「……」

すると和馬は急に身を乗り出してきた。

息がかかりそうな距離からニヤッと私を覗きこむ。

「それとも悪いこと、されたかったのかな?」

「!」

「今からでもいいんだよ」

耳元で囁くように言われて、私はあまりの驚きに息が止まって、勢いよく身を引いた。

その声の色っぽさに心臓が跳ね上がる。

「なっ、何を言って……!」
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