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顎に拳を当てて、ぼんやりと外を見た。

朝の薄青い光の中、道を歩く人もポツポツと増えている。

もうすぐ出勤時間なんだろう。

このまま待っていたら、本当にハルの姿を見れるんだろうか。

ふと、嬉しそうに僕を見上げる笑顔や、抱き締めた時の柔らかい感触を思い出した。

もはや、全てが幻のような気がしてきた。

僕は、ちょっとおかしくなってきているのかもしれない。

外を見ると、さっきの静けさが嘘のように人通りはかなり多くなってきた。

日差しも強くなって、街が動き出した感じがする。

僕はじっと駅から続く道を見ていた。

電車で来るならこの方角から来るはずだから。

同じ背格好、似たような髪型にいちいち反応しながら僕はじっと見続けていた。

遠くにチラッと見えた姿。

来た。

ハルだ。

正真正銘、本物のハルが見えた。

でも、ハルを目にした喜びと同時に、僕は目を見開いたまま思考が停止した。

なんで寺嶋と一緒に歩いているんだよ。
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