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僕に巻き付いたハルの腕をはずして、両手で肩を持った。

ハルは不思議そうな顔をして首を傾げた。

「どうしたの?」

僕はポケットから指輪を取り出した。

僕の所に帰ってくるかもわからないのに、今日僕は指輪を買った。

すぐ手に入るような物だし、それほど高価じゃないけれど。

何でもいいから僕の気持ちを形で示せる物がほしかった。

指輪のサイズなんてわからないから、店の人に身長はこのくらいって伝えて、そこから予想したサイズを買った。

高価ではないとはいえ、それなりの金額だったのに、今まですっかり忘れていた。

「君のために買ったんだ。はめていい?」

ハルは何も答えず僕を見ていたから、左手の薬指に指輪をゆっくり通した。

「少しゆるいかな?」

ハルは茫然と左手を見ていた。

「どうしたの、これ?」

「ハルのために買った。僕の気持ちを伝えるのに言葉だけじゃ足りないから、形にできないかと思ってさ」

「そんな……、これ、高いんじゃないの?」

「このくらいでハルに気持ちが伝わるなら、安いもんだよ」

「でも……」

「いらない?」

ハルは困惑した顔をしつつ、指輪から目を離せないようだった。

「そんなわけ、ないよ」

「じゃあ、受け取ってくれる?」

「……うん」
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