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「ハルのお母さんは子どもの頃から仕事ばっかりだったもんね。今も変わらないんだ」

「うん。変わらないよ」

「お父さんは?」

「え?うーん。どこにいるのかも知らないよ」

「ふーん」

私は、子どもの頃の自分の家庭、というかお父さんのことを思い出すのが好きではない。

私のお父さんは、よく怒鳴ったり物を投げたりした。

怒鳴る理由は、足音がうるさいとか、食べるのが遅いとか、泣くなとか。

理由は特になくて、とにかく気に入らなければすぐに怒鳴った。

だから、小さい頃の私はいつもお父さんの目を恐れてビクビクしながら、目立たぬように過ごしていた。

お母さんはそんな人ではなかったけど、お母さんと2人の生活になってからも、私はなるべく邪魔にならないように、しっかりしなければと気を張って、大人しく生活していた。

私が強く言えないのは、このあたりのことが原因なのかもしれない。
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