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電車を降りて、駅から歩いているうちにだんだん会話が途切れてきた。

「ハル、大丈夫?」

「……あんまり大丈夫じゃないかも」

私は変な緊張感を感じていた。

「やっぱり、怖いな」

私がぽつりとそう言うと、和馬は突然、私の手を握った。

「大丈夫だから」

和馬はにっこり笑って、手をつないだまま歩きだした。

私が驚いて和馬を見上げると、「このくらいで赤くなるの?」と困ったように見下ろした。

「あ、あの」

「恋人って設定なんだから別にいいでしょ?」

和馬の手は大きくて、握ってくるその力は私を守ろうとしてくれているように感じられた。

きっと大丈夫、大丈夫。

私は何度も自分にそう言い聞かせた。
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