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自分の家より、和馬の家の方が会社に近くて駅にも近いから、私はいつもよりかなり遅い時間に出発した。

和馬は玄関まで来ると嬉しそうに見送ってくれた。

「いいね、その格好。似合ってるね」

「そ、そうかな?……じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい」

そんなやり取りがくすぐったくて、少し頬が赤かったかもしれない。

駅に向かって歩いていても、胸がうずうずして治まらなかった。

でも、電車に乗って見慣れた車窓を見ていたら少しずつ冷静な感覚が戻ってきて、会社の最寄り駅で降りた頃には、ちゃんといつも通り仕事の私がスッと入ってきた。
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