極上笑顔の上司
仕事が開始されたフロアに甘ったるい声が響き渡る。
まぁ、よくあることなんだけど。
「海人部長ぉ。これ、前回のデータの件なんですけどぉ」
「徳留さん。何?」
いつもと変わらないゆったりとした笑顔で
海人部長は
振り返った。
「コレがーーーちょっとなくてーー」
少し鼻にかかったような
声で、海人部長に触れるように書類を渡す。
おぉ。
徳留さん。今日も激しいですね。
彼女のピンクのブラウスの胸元に目が行く。
あれは、女子でもドキドキもんでしょ。
明らかに豊満な胸を強調して 猛アピールが見て取れるが、
海人部長は全く動じず、
変わらぬ笑顔で「これは、営業部に提出しているはずだよ」
なんて言いながら
笑顔でそのアピールを交わす。
キラキラ笑顔でかわすなんて
さすが海人部長。
手慣れていますね。
他人事なので
楽しんで遠目から観察する。
コポコポとコーヒーメーカーの水が落ちて
コーヒーの香りが
ふんわりと漂う。