形なき愛を血と称して
「お代、これでいいわね」
机に置かれた小袋は、音からして僅かしか入っていない。
「今、吸血鬼いないから、もうちょっと色をつけてほしいんだけど」
貴重だよ?と、一応中身を確認する。思った以下の額しか入っていない。
「世界平和に貢献するのが、人類の努めよ」
「ほんと、何に使っているんだか」
「傷つけずに相手をノックアウトさせるには、アタシの美貌だけじゃダメなのよね」
「体でも使えば、すぐに相手は昇天するよ」
んまっ、と軽蔑の眼差しを向けられようが、リヒルトは意に返さない。
しかしながら、出された金額に文句は言わなかった。投げやりにもなる残りの人生。金を貰ったところで、使用する自身の姿が思い浮かばない。
「ラズに極上な餌でも飼ってあげなさいよ」
「考えておくよ」
舌を出して息が荒くなるラズだった。それに頬ずりをする来客を見、リヒルトは常々思う。
「キング・シェパードの重さ、知ってる」
「さあ、どれくらい?」
「軽々と持てない重さ」
なのに、片腕だけでも抱いてみせる来客。別段、不思議でもないことだ。