形なき愛を血と称して
「僕はそもそも、その『魔法使い』とやらが、鼻持ちならないけどねぇ」
召喚師として、魔術等の分野はさりとて受け入れられるが、この来客が自称する魔法使いに限っては胡散臭いとしか思えない。
世界平和のために頑張る。
そんな集団を魔法使いと呼ぶのだと、パステルカラー頭が主張してしまえば眉根を寄せるしかない。
人の善行そのものが、偽善臭く信用ならない。幼少より蓄積された人の醜さが、目に映る奴ら全てのフィルターとなる。
「やーねー。顔はかっこいいのに、性格が腐ったレモンじゃ恋愛対象外だわ。これなら、ラズとデートした方がまだましね!」
「その腐ったレモンのイラつきがピークになる前に出て行ってくれよ。昨日はその薬の精製で、徹夜なんだ」
「若いのに情けない。無気力なオジンじゃあるまいし。もっと人生楽しみなさいな。オールよ、オール!」
「人生楽しみな、ねぇ。ーーハハ、何気に結構、“来るね”」
椅子に深く座り、小瓶を眺める。
吸血鬼はもとより、人間にも快楽を与える薬はーー生きる糧ともなるのか。
「使った奴の末路、見てんでしょ」
「人間に関しては、それほどない。僕の生まれた年は既に、こういった薬の取り締まりが厳しくなっていたから」
カウヘンヘルム家の物に副作用はない。だからこそ、“使い続けてもリスクを伴わない”要因そのものが、リスクとなる。
依存性が高い。それだけで規制にかかるのは十分なのだ。
今や、この薬を使うのは自称魔法使いのような、魔術関連に特質した者たち。時折、どこから聞きつけたのか、一般人が買いに来ることもあるが、あれも転売するのであろう。
「売るからこそ、使ってはいけない。違う?」
「そうだねぇ。これの精製方法を知っているから尚のこと、だ。因みに、君は使うの?」
「使わないわよ。見るからに体に良くなさそうだわ。お肌が荒れたらどうするのっ!?」
「魔法で治せば?」
「それが出来たら、アタシは今頃マリリン・モンローよ」
ラズを抱き、立ち上がる来客。
物差しでも入ったかのような真っ直ぐな背筋。派手さはともかく、余分な脂肪がない体は来客が言うところの美であるのだろう。