形なき愛を血と称して
「は、早くしてくだーーなさいっ」
花には似つかわしくない顔をしていた。
目元が歪んでいる。酷く、苦しそうに。
「お願いです、からっ。このままじゃ、私ーーあ、その……教えなさい!」
酷く、泣きそうな顔をしていた。
リヒルトの首にかかる手には、最初から力が入っていない。この吸血鬼が何をしたいのか計りかねる。
強気な言葉でありながら、震えている体。
こちらがつつけば、一気に崩れ落ちそうな女はーー
「ガウッ!」
「きゃあっ!」
ラズの一吠えで、部屋の隅に縮こまった。
牙を剥くなとの命令を守りながらも、主人を守ろうとするラズは、吸血鬼を更に追い詰める。
けたたましい鳴き声は、吸血鬼の言葉をかき消さんばかりだった。
「……」
その様子を傍観し、涙目の吸血鬼と目が合った。
助けてと訴えかけられているのは分かるが、先ほどしたことを考えれば、このままラズに食い殺されてもいいだろう。
腰を上げ、手をかけられた首をさする。
「何が、したかったんだ」
冷徹な声が出されるなり、犬の鳴き声は止む。
それでも震える吸血鬼は、自身の先を見据えてしまったからだろう。
「やっ、ごめ、ごめんなさいっ」
失せた強気ーー張りぼてがなくなれば、そこいらの女と大差ない。それでも、容赦ない氷の瞳は質問に答えろと促すだけ。
「と、当主に、薬の作り方、聞けば……いいって。何としてでも、聞けって、ごめんなさいごめんなさいっ」
たどたどしい言葉でも、大方予想通り。
あちらもカウヘンヘルム家を見限ったのであろう。
最後に薬の精製方法を聞き出そうとした訳だが、その大役にこんな女を寄越すのだ。
「捨てられたな、お前」
肩を跳ねさせる吸血鬼。思い当たる節があるのか、顔を伏せ、嗚咽を漏らす。
そんな吸血鬼を観察しながら、もう一つ聞きたいことが出来上がった。