形なき愛を血と称して

「ワンッ!」

ラズの警笛。
同時に、前方からの圧力。

押し倒されたと気付いたのは、背中を打った刹那で。

「薬の精製方法を教えなさい」

自身に跨がる女を見た。

紋様から這い上がる細い腕の持ち主は、その手でリヒルトの首を絞めている。

端的な言葉は、さもないとどうなるかを示唆している。

薬の精製方法(レシピ)、それを聞きたがる者は数多いた。その度に、カウヘンヘルム家は対処をしてきた為、門外不出。

今ならば猟銃でも犬でも使えば造作もないのに、リヒルトにはその気がなかった。

教える気もさらさらない。これが自身を殺す者かと、よくよく見上げる。

「さあ、早く……!」

目が覚めるような髪色。昼間来た自称魔法使いに近しいが、花のように美しい橙は見ていても苦にならない。

マリーゴールドの花を連想するのに。

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