Special to me
『それはないよ。結婚すれば真子ちゃんは鉄道員である夫を送り出すことが、自分の立場でやるべき役目だって考え方が変わるさ。今はお前の"彼女"という不安定な立場だから、居ても立ってもいられなかったんだろうけどな。汲み取ってやれよ、彼女の気持ち』
「はい」

俺も曽我さんも、持っているマグカップのお茶をひと口飲んだ。

『うらやましいな、お前』
「え?」
『真子ちゃん、どうしてこんないい女、今まで誰も捕まえなかったんだろうな』
「ですね」

『どこかで、お前のような男に声を掛けられるのを、無意識に待っていたのかも知れないな。さ、次の回送電車が来る』

曽我さんはコートを着て、ホームへと向かった。

2人きりになった事務室。

俺はキャスター付きの椅子で座ったまま移動して、長椅子で寝ている真子に・・・

不謹慎と分かりつつ、思いが溢れて、思わずキスをした。
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