Special to me
『ほら、決まりだよね?』

そう言うと"左手も貸して"と言って、両手を握った。

"フニフニ"という擬音語が合う握り方。

軽く握ったり、離したり。

そんな晃樹の仕草を受けとめながら、私は晃樹に私の考えを告げた。

「私、社宅に住むよ。晃樹のお嫁さんになるから、鉄道員のお嫁さんになるんだもん。私、新しい出会いが欲しいし」
『新しい出会い?』
「社宅に住めば、晃樹と共通の知り合いが増えるかも知れないじゃない。それが嬉しいし、楽しみ」

私に迷いはなかった。

仕事は辞めずに晃樹の会社の社宅に住む。

『分かった。真子らしい考え方だよ。前向きで、楽天的で』
「それって褒めてるの?」
『もちろんだよ。優柔不断な俺を、これから沢山、助けて欲しいな』
「そうやって自分を卑下しないの。私に傘を貸すのに声を掛けてくれた勇気と仕事への使命感。私はそんな晃樹が大好きなんだから、ね?」

『ありがとう』

と、私の頭を撫でてくれた。

『さ、行こう。うちの母さんが待ってる』
「うん!」

晃樹は再びエンジンをかけ、実家に向けて出発した。
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