Special to me
駅長室は、初めて入る。

『この度は、いろいろめでたいですねぇ』

駅長はそう言って私達を笑顔で出迎えた。

住民票の写しを提出し、手続きのお願いをした。

『おや、奥様はまた正装ですね』

"奥様"か。

間違いないけど、慣れないので、くすぐったい。

「あ、はい。午前中は仕事していたものですから」

私の格好は上下グレーでボトムがタイトスカートのスーツ。

『それは大変ですねぇ。来週は旅行でしょ?楽しんで来てください。それと、良い機会だから1つ伝達しておくと・・・』
「はい」
『ご主人の米原くんは、助役試験に受かった後は10月に車掌乗務区に異動となることは確実だ』

助役試験に受かったら、どこに配属になるか分からないとは言ってたよね。

「車掌乗務区、ですか」
『助役として勤務するには、車掌経験が必須なんだ。だから車掌乗務区で最低半年間、修業のような形で配属されるんだよ』

晃樹が説明してくれた。

「車掌って、電車の後ろに乗っている人だよね。ドアの開け閉めをする人でしょ?」
『まぁ、仕事はそれだけじゃないけどね』

私達のそんな会話を駅長は"アハハハ"と笑って聞いていた。
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