Special to me
『奥さんは鉄道の仕事をご存知ないんですね』
「す、すみません。勉強します」
『いやいや、知らなくていいんですよ。"男、厨房に入らず"じゃないですが、米原くんが望むのならともかく、無理して旦那のテリトリーに入ることはないんですよ』

"それに"と駅長は続けた。

『鉄道の仕事は奥が深い上にイレギュラーで仕事が好きでないとモチベーションが維持できない局面も多い。理不尽なことにも耐えなければならない時もたくさん出てくる。だから、身も心も疲弊する助役はたくさんいるんだ。だからどうか、米原くんを、支えてやってくれ』

「はい」
『あとは、仲間内で祝ってもらってください。私の出る幕は以上だ。旅行、気をつけて』
『ありがとうございます』

2人で一礼し、駅長室を出た。

それから、うちに帰ってお母さんに入籍したことを報告した後、西ノ森駅へ向かった。

車は、ある建物の駐車場に止まった。

『ここが、社宅だよ』

そう言えば、社宅であることをいいことに、賃貸物件を探す時には必ずある"内見"をしていなかった。

『うちが入るのは211号室。でも室内クリーニングが終わっていないみたいで鍵を総務から貰えていないので、今日はここまで』

と、211号室のドアの前で話してくれた晃樹。
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